グローバルな経済社会情勢が変化し、国家の安全保障は外交・防衛中心の視座から、経済・情報分野を重視する包括的な概念へと拡大してきました。これは過去10年以上に及ぶAI(人工知能)などの革新的な技術の進化と、軍事・民生両面で利用されるデュアルユース技術の急速な比重拡大、さらには経済・情報自体を国家戦略とする大国の新たな思考などが背景にあると言えます。
一方、2020年からのパンデミックの災禍を契機に、半導体や医薬品など重要物資の確保について社会的要請が増大。22年2月のロシアによるウクライナ侵攻や、23年10月以降の中東地域の激しい戦闘と混乱など、国際秩序を揺るがす急激な変化は、あらゆる分野でサプライチェーンへの深刻な懸念をもたらしています。
東アジア情勢の緊張も続く中、米国第一主義を掲げるトランプ政権の再始動により、グローバルな不確実性は高まり、わが国も含めて経済安全保障がこれまで以上に重要度を増すことは明らかです。特に対中政策の行方によっては日本の企業経営への影響は極めて大きく、個社の独力では生き残りが難しい予測不能な時代が訪れたとも言えましょう。
わが国では22年5月に経済安全保障推進法が成立し、先進各国に先立ち体系化した法律が整いました。今後の国益を考えるに当たり、24年5月に成立した重要経済安保情報保護活用法に基づくセキュリティ・クリアランス制度の速やかな導入とグローバル経営にも資する具体的な対策を、企業の規模に関わらず講じていく必要があります。さらに、トランプ政権の関税を巡る新たな施策も注視しつつ、国と企業の連携体制の充実・強化が求められるところです。
第3回「ECONOSEC JAPAN」では、最新の情報発信と今後の事案への多角的対処を考えるカンファレンスおよび展示会等の定期開催を通じ、産業各界に対する意識啓発と経営戦略における対策の促進を図ります。併せて、経済安全保障とビジネスの結節点として官民の連携を支援するとともに、主に企業経営層のための情報交換・交流の機会創出を通じてリスクからバリューにつなげるチャンスの提供を目指し、もってわが国の産業各界の国際競争力に資する社会環境の醸成に寄与することを目的とします。